どうもこんにちは。
エアコン職人さかなです。
最近では新築で全館空調を検討する人が増えてきたように思いますが、全館空調なんか絶対にやめた方がいいですよ。
と、個人的には感じておりますので、プロの職人から見たその理由をご紹介します。よろしくお願いします。
全館空調のメリットデメリット
メリット
- 脱衣所とかトイレまで涼しい
- 空間デザインを妨げない
- 間取りの自由度が高い
- ヒートショック対策になる
- 冬の結露がない
- 虚栄心を満たせる
デメリット
- 故障時に全滅する
- 故障時の修理費が高い
- 更新費用が高い
- メンテナンス費用が高い
- 電気代が高い
- 各部屋ごとの温度調節ができない
- ダクトがホコリとカビだらけになる
- 暖房時は乾燥しすぎる
- 家中に匂いが充満する
- 音がうるさい
- フィルター掃除の手間と虫問題
- 空気清浄は嘘
全館空調のメリットその1
『脱衣所とかトイレまで涼しい』
全館空調の1番のメリットと言えば、家全体が涼しいとかそういうところになるでしょう。
玄関を開けて涼しい、廊下もトイレも涼しい、温度差がなく快適というのは大きなメリットかと思います。
しかし、廊下が涼しいとか、脱衣所が涼しいとかは、最初のうちは感動するかもしれませんが、正直、普段、人がいない場所まで常に冷房しているわけですから、言ってみれば「無駄」です。
4LDKで1部屋しか使っていないのに、その他のお部屋含め、家全体を常に冷やしているのは無駄ですよね。
それが大した電気代でなければいいのですが、毎月の電気代もバカになりませんから、その明細を見るたびに無駄なコストを感じずにはいられないと思います。
どんなことにも言えることですが、常にメリットとデメリットは表裏一体であり、何かを選択すれば何かを失うことになります。
ソーラーパネルを設置して、自家発電分で全館空調代をまかなうのであればいいと思いますが、ソーラーパネルにも寿命がありますし、具体的な話になってしまいますが、「パワーコンディショナー」の寿命はもっと短いです。
ハウスメーカーの説明よりも断然早く壊れますので、せいぜい10年だとお考えください。
「ソーラーパネルを設置すれば毎月の電気代はペイできますよ」と言う宣伝文句がありますが、それが通用するのは最初のうちだけです。
10年でパワコンは壊れ、20年でソーラーパネルが壊れ、結果的に「順調に発電していたのは最初の10年だけ」と言うことになります。
その度に新品に入れ替えればいいかもしれませんが、あなたはその家に何年住むつもりですか?
そのソーラーシステムの更新料金を考えれば、毎月の電気代が浮いたところでトータルでマイナスになります。
まず最初にお伝えしておきたいことは、「ハウスメーカーの言うことを鵜呑みにしないこと」です。
いろんな情報を集め、多角的に物事を観察し、総合的に判断してもらいたいと思います。
電化製品というのは必ず壊れますし、いずれ修理もできなくなりますし、最初に大きな初期投資をするわけですから、常に最高と最悪のケースを想定しておかなければなりません。
そのための判断基準として、太陽光の工事をしている人間に直接話を聞くことだったり、耐用年数と保証期間、保証内容についてしっかり議論すること、ハウスメーカーの言うことを鵜呑みにしないことが大切です。
全館空調のメリットその2
『空間デザインを妨げない』
僕は普段はエアコン職人をしているのですが、常日頃から、疑問に感じていることがありまして、「エアコンの形ってダサくない?」ということです。
せっかくのデザイン住宅でデザインに凝って、空間を演出しても、壁掛けエアコンが「ドーン」とあるだけで全てが台無しです。
あの壁から張り出した形状がどうしても空間演出の妨げになるんですよね。笑
なので、あのダサい壁掛けルームエアコンが空間から消えるのは大きなメリットだと思います。
全館空調のメリットその3
『間取りの自由度が高い』
空間デザインとも少し重なってくるのですが、普通の壁掛けエアコンだと、部屋の形がいびつだと冷房効率が悪くなったり、「部分的に冷えない」とかキッチンが暑いとか、そういう問題が発生することがあります。
そういう問題を解決しようとすると、どうしても部屋の形を長方形にしなくてはならなかったり、天井を低くしないといけなかったり、間仕切りを設置しないといけなかったり、いろんな「間取り的な制約」が発生します。
全館空調であれば、天井も気にしなくていいし、間仕切りも極端に少なくてもいいし、冷房効率を気にせずに間取りを考えることができます。
全館空調のメリットその4
『ヒートショック対策になる』
「全館空調はヒートショック対策になる」とは、よく言われることですが、果たしてそれがメリットと言えるのかどうかはちょっと疑問ですが、寒暖差が少ない分、ヒートショックは少ないと思います。
ちなみに「ヒートショック」をご存知ない方はWikipediaをご覧ください。
全館空調のメリットその5
『冬の結露がない』
例えばツーバイフォーの家なんかは、冬の時期は毎朝窓に結露水がつき、窓のパッキンがカビたりします。
全館空調であれば、そのような屋内の結露に悩まされることはないです。
しかし、それはイコール、それだけ乾燥しているということで、メリットであり、デメリットとも言える部分です。
全館空調のメリットその6
『虚栄心を満たせる』
もしかしたら、人によってはこれが一番のメリットになるかもしれません。
見栄を張りたい方、「ウチ、全館空調だよ」と周りに自慢したい方にはいいのかもしれません。
全館空調のデメリット
ここからがこの記事の本題になります。
僕個人は全館空調はメリットよりもデメリットの方が遥かに大きいと感じていて、もし、自分が今、家を建てるとしたら、絶対に全館空調は選択しません。その理由をこれから紹介していきたいと思います。
いろんなハウスメーカーが利益追求のためにいろんなことを言うと思いますが、騙されないでください。後悔するのは自分たちなんですから。
全館空調のデメリットその1
『故障時に全滅する』
全館空調のデメリット第1位はなんと言ってもこれでしょう。
室内機でも室外機でも、とにかく壊れたら全滅します。
常に最高と最悪のことを考えた方がいいとお伝えしましたが、最悪のパターンを考えてみると、真夏の一番暑い時期に室外機が故障したとします。
メーカーサービスを呼んで点検依頼をしますが、その点検に来るのがまず5日後とか、そういうのは全然あり得ます。空調メーカーは夏が一番忙しい時期ですから、他にも同じような故障して困ってる人たちの行列ができているわけです。
連絡してから何日かは待たされることを覚悟しておくべきです。
そして、連絡してから5日後、ようやく点検に来るわけですが、この時に、簡単な修理で直ればいいんですけど、簡単な修理では直らないと言うことがエアコン業界ではよくあります。
具体的には、圧縮機の不良、四方向切替弁の不良などです。
これらは部品の発注が必要ですし、一旦、エアコンのガスを全部抜いてから溶接作業で部品交換をする必要がありますので、点検当日では修理不可能です。
ですので、点検当日でまずは故障箇所の特定、診断、それから部品の発注とその納期がまた3日ほど、最短で3日後の修理、最悪は7日後の修理とか、それくらいのスケジュールは普通にあり得ると思います。
そうなると、故障が発覚してから点検までに5日、修理完了までに7日、合計で12日とか、真夏のクソ暑い時期に我慢しなければなりません。最悪のパターンを想定すると、約2週間ほどは我慢しなければならないと思った方がいいでしょう。
実際、僕もエアコン工事をしていて、こういう人は毎年に何人も出会います。
真夏にエアコンが全滅して困っている人が口を揃えて言うこと、「全館空調なんかにしなければよかった…」こんな言葉を毎年のように聞かされます。
所詮、エアコンといえばそれまでですが、でも、現代人にとってエアコンは欠かせないものになっています。
長い年月使ううちのほんの2週間かもしれませんが、その「ほんの2週間」のストレスは想像を絶するものだとお伝えしておきます。
しかもそれが、たった一回で済むという保証もありませんからね。僕なら一家でホテル住まいにします。
その時のホテル代は当然どこからも出ませんし、修理代も1年以上は基本的には自分持ちですから、圧縮機交換なんてことになれば、修理費で10万円はかかります。保証内容と契約をしっかりと確認しておいてください。
全館空調のデメリットその2
『故障時の修理費が高い』
普通のルームエアコンであれば、圧縮機交換で大体10万円前後ですが、全館空調の機械の場合、最悪はもっとかかるかもしれません。
エアコンというのは精密機械でいろんな部品が複雑に相互作用して組み立てられています。その数ある部品の中で、何かひとつでも異常があればすぐに停止してしまいます。その証拠に、今まで、あなたが出会ってきた電化製品の故障のことを思い出してみてください。
電化製品というのは基本的には10年以内に壊れ、10年間、何事もなく使える確率はせいぜい50%くらいなんです。
エアコンの場合、その確率はもっと下がりますし、全館空調なんてまだまだ歴史が浅いですから、その修理体制と仕組みがまだしっかり出来上がっていないんです。
そのしわ寄せは全てお客さんの財布にいきます。
大手のルームエアコンであれば、数ある事例からリコール対象判断され、メーカーが修理費用を全て負担するということもよくありますし、修理体制がちゃんと出来上がっているので、モノ・ヒト・カネの移動がスムーズで無駄がありません。
そういうことを突き詰めて考えていくと、やはり、ルームエアコンの方が10年間の修理費平均コストは低いと思います。
全館空調のデメリットその3
『更新費用が高い』
「全館空調をやめてルームエアコンにしました」こんな声をよく聞かされます。基本的に、エアコンの寿命は10年だとお考えください。
そうすると、10年ごとに機械を更新する必要があるのですが、これがなかなか大変な工事になります。
全館空調にかかる費用を3分割すると話がわかりやすいのですが、「機械代」「先行配管やダクト」「工事費」まずは費用の分類をこの3つに分けます。
そして、更新の際は「先行配管やダクト」は再利用するのが基本ですので、更新時にかかる費用は「機械代」と「工事費」ということになります。
この更新時の機械代が機種にもよりますが、おそらく平均して35万円前後でしょう。工事代金が15万円前後で、トータルで50万円くらいを想定しておけばいいと思います。
なので、更新費用は10年ごとに50万円ですね。
ちなみに全館空調の導入費用が200万円とかだと思うんですけど、そう考えると、初期費用の200万円のうち、50万円は機械代と取付工事費で、150万円が先行配管とダクトとその工事費になるのですが、僕の知り合いは工事代で一軒8万円でやってますので、もろもろ計算すると120万円くらいが工務店の利益になってます。ハウスメーカーにとってはボロい商売ですね。
全館空調のデメリットその4
『メンテナンス費用が高い』
一般的なルームエアコンだと、1年間のメンテナンスって基本的にないので0円です。自分でフィルターを掃除するくらい。
仮にリビングのエアコンを定期的に分解クリーニングをしたとしても、10年で6万円とかだと思います。
一方、全館空調の場合だと、強制的にメンテナンス契約をされることが多く、そのメンテナンス費用は、1年間で約2〜3万円のところが多いと思います。
10年間で約20万円〜30万円なので、全館空調のメンテナンス料の方が圧倒的に高いと思います。
全館空調のデメリットその5
『電気代が高い』
電気代は使い方次第になってしまうのですが、全館空調を一般的なルームエアコンで考えれば、全部屋のエアコンを全てフル稼働プラス、洗面所とかトイレとか廊下とかも冷やすことを考えると、おそらく2倍くらいの電気代になるかと思います。
冒頭でも少しお伝えさせていただきましたが、ソーラーパネルを設置して、電気代を賄うという方法もありますが、その家に何年住むつもりですか?っていう話で、長期的な視点で物事を考えていかないといけないと思います。
短期的には最初の10年間はソーラーパネルも全館空調も順調で、何事もなく快適に過ごせるのかもしれません。
しかし例えば、30歳でマイホームを建て、フラット35の35年ローンを組む人であれば、65歳の定年に照準を合わせているはずなんです。
「80歳とかでこの世を去る時までできれば住んでいたい」と考えている人も多いでしょう。そうすると、50年は住むつもりだという計算が成り立ちます。
50年という長期目線でこの全館空調という物を考えた時、あるいは太陽光発電ということを考えた時、そのシステムがどれだけ有利に働くかを考えてみて欲しいんです。
そして、常に最高と最悪を想定してください。
ハウスメーカーは最高の提案をしてきますが、その最高の未来が訪れる確率は50%以下で、最悪のパターンは「壊れて発電しなくなっちゃった」という未来もあるということです。
修理したりパワコンの入れ替え、パネルの入れ替え費用を考えた時に、50年後、「太陽光発電を導入してよかった!」と思えるかどうか?
僕はエアコン工事もするし、太陽光の仕事もするので、お仕事をもらっている立場でこんなことを言うのもどうかと思いますが、僕の結論は「長期的になればなるほどマイナス」だと思ってます。
それは、売電価格もそうだし、発電効率もそうだし、「全体最適」ということを考えてもそうです。
自分で工事から仕入れまで全部できるのであれば話は別ですが、そうでなければ太陽光発電はおすすめできません。
全館空調のデメリットその6
『各部屋ごとの温度調節ができない』
これは大問題だと思いますね。個別の温度調節ができないなんて空調として欠陥品ですよ。
なので、全館空調を採用する際は、1階と2階でそれぞれ個別のエアコンを設置する2台方式の方がいいと思いますね。
個別の温度調整はできなくても、最低でも1階と2階では分かれていた方がいいです。なぜなら、住宅というのは基本的に上の階ほど暑いからです。
冷たい空気は下に溜まる性質があり、暖かい空気は上に溜まる性質があります。
なので、2階建ての一軒家であれば、1階よりも2階の方が暑くなるのは当然のことです。
じゃあ、2階と1階で冷房の効き具合が変わってくるのは当然ですよね?ってことで、1台の空調方式だと、2階の人に合わせたら1階の人は寒いし、1階の人に合わせたら2階の人は暑いんです。
全館空調のそもそもの前提として「全部屋に人がいる」という設計ですから、やはり個別の温度調整ができないというのは問題です。
だって、2階と1階の温度差による「暑い」「寒い」の問題を解決しようと思ったら、「同じ部屋で過ごす」しか解決策はありませんから、そうなるともはや他の部屋を冷やす意味がないですよね。
それはつまり、本来、「家中どこにいても快適」という全館空調の前提が覆ってしまうということです。
夜寝るときもそうです。
暑い寒いの感じ方は家族といえども人それぞれですから、「私はたまには自然風を感じながら虫の声を聴きながら窓を開けて寝たいんだ」と言ってもそれが簡単にはできないわけです。
それにリモコンも普通は1台につき1箇所にしかありませんから、夜中に寝てても温度調整のためにわざわざリモコンがある場所までいかないといけませんし、エアコンを使い始めたら家中の窓を閉める手間があるとか、こういう不便さなどは、業界にいる我々は知っていても、普通の人はいくら想像してもわからなくて、実際に体験してみないとわからないことです。
全館空調のデメリットその7
『ダクトが埃とカビだらけになる』
全館空調というのは、室内機からダクトが各部屋に伸びていて、そのダクトを通じて冷気とか暖気が部屋に送られます。
このダクトがものすごく汚れるんです。
『参考画像』
まず埃ですが、空調というのは室内の空気を循環させるのが基本で、屋外から空気を吸い込むと、その温度差で余計なエネルギーを必要とするからです。
なので、室内の空気を吸い込むのですが、この時に、屋内の空気中の埃を一緒に吸い込んでしまいます。埃を一緒に吸い込んでフィルターで埃だけをキャッチして、空気は各部屋に送られます。
しかし、このフィルターというやつがまた簡易的で、細かい埃なんかはフィルターも通過してしまうんですね。このフィルターを細かくすればするほど、今度は空気の循環も悪くなりますから、空気だけを通して埃は絶対に通さないというのは実は難しいことなんです。
なので、空調機には埃はつきものなのですが、全館空調の場合、このフィルターを通過した埃がダクトに溜まっていくんですね。
一般的なルームエアコンであれば簡単にフィルターも掃除できるし、室内機の中に溜まった埃なんかはいざとなれば分解クリーニングできます。
しかし、全館空調になると、ダクトの中ってもうほとんど触れなくなります。
ダクトの中がどうなっていようと、そうそう簡単には掃除ができないし、全館空調の場合は家全体にダクトが張り巡らされているので、仮にダクトを掃除すると言っても範囲が広すぎて大変です。
埃だけでもそんな状態なのに、冷房時にはさらにカビが追加されます。
室内機の吹き出し温度は、冷気のロスを考えて、部屋の吹き出し温度よりもかなり低く設定されています。
ダクトが通っている床下とか天井裏は熱気がこもっているので、ダクトの中は冷たい冷気、外は熱気のその温度差で結露します。
この結露水に空気中の細菌や埃が付着し、カビの胞子がそれを栄養分としてカビが育ちます。
温度差=結露なので、室内機の吹き出し口に近いところのダクトはカビだらけになります。
あとは、お部屋の冷気吹き出し口が天井にある場合ですね、部屋の熱は天井付近に溜まりますから、吹き出す冷気の温度差により、ここもよくカビたりします。
全館空調はダクトをずっと再利用する仕組みですから、一度カビてしまうともう2度と元には戻らないですし、更新の時に家中のダクトを入れ替えようと思っても無理です。
なので、ダクト清掃というのはそうそう簡単には出来ませんし、本気でやろうと思えばできなくもないですが、自分では無理なので専門業者さんに依頼する必要がありますし、その清掃コストもそれなりの金額になりますし、何よりも、ダクトの素材によっては「ダクト清掃自体不可」という素材もあります。そうなると、天井や壁を剥がしての大規模リフォームになります。
建築時の壁が貼られる前にダクトを仕込んでますから、それをやりかえようと思ったらまた壁を剥がさないといけないんです。
つまり、専門業者さんに依頼して掃除をするか、大規模リフォームをしない限り、埃とカビにまみれた風を吸い込み続けることになります。
しかもこの問題は全館空調を使い続ける限りずっと続きます。覚悟してくださいね。
全館空調のデメリットその8
『暖房時は乾燥しすぎる』
日本の冬場は空気が乾燥します。
そして、全館空調の場合は高気密高断熱の第一種換気が基本ですから、暖房でお部屋の温度が上がれば上がるほど湿度は下がります。
全館空調の場合は、お部屋の温度を調節するだけでなく、自動で換気をするシステムもセットでついてくるので、第一種換気だと約2時間でお部屋の空気が入れ変わります。
そうすると、高気密が逆に災いして、お部屋の湿度が保たれないことになりますので、加湿器を置いて加湿しても、空気中の水分がどんどん屋外に排出されてしまい、なかなか湿度を保ってくれないということが起こります。
これが全館空調の暖房時の乾燥の原因です。
全館空調の暖房というよりも、全館空調を採用することによる高気密高断熱設計と、第一種換気が合わさることによる弊害とでも言いましょうか、こればかりは避けられないことかと思います。
今はいろんな全館空調システムがあって、中には加湿を補助するようなシステムもあるみたいですが、実際に使ってみるとやはり乾燥するようなので、冬場は加湿器が必須になり、その加湿器も家中に設置しないといけないというデメリットがあります。
その加湿器の電気代、冬以外の時期の保管場所、出し入れの手間、いろいろ考える必要があると思います。
全館空調のデメリットその9
『家中に匂いが充満する』
主に料理の匂いだと思いますが、家の中を空気が絶え間なく循環していますから、料理の匂いが家中に充満するというデメリットもあります。
気にならない人は気にならないもかもしれませんが、気にする人は気にすると思います。
ただ、換気システムもしっかりしているので、匂いの元がなくなれば2時間で匂いもすぐに消えます。
全館空調のデメリットその10
『フィルター掃除の手間と虫問題』
全館空調のシステムにもよりますが、基本的には室内機のフィルター清掃の手間はあります。
しかも、全館空調のフィルターは掃除して終わりというものではなく、毎回新しいフィルターを購入して、使い捨て方式のフィルターが多いです。
なので、そのランニングコストも考慮しておかないといけないのと、熱交換換気システムのフィルター清掃についても考えなくてはなりません。
先ほどもお伝えした通り、全館空調を採用するということは、高気密高断熱である必要があり、そうなると第一種換気システムを採用するところが多いです。
そして、仮に2時間に一回お部屋の空気が入れ替わるということは、せっかく冷やしたり温めた空気が外に漏れ出していってしまうので、「熱交換型換気システム」を採用するところが多いです。
これは何かというと、お部屋と屋外の空気を入れ替える時に、お部屋の熱を屋外の空気に移動させて、なるべくエネルギーロスがないようにする換気システムです。
この換気システムは24時間動き続け、屋外の空気を吸い込むのですが、その時に、吸い込み口付近にいる屋外の虫とか空気中のゴミまで一緒に吸い込んでしまうんです。
当然、そのゴミとか虫が屋内に入ってこないように、熱交換器にはフィルターがあるのですが、このフィルターも定期的に掃除をする必要があります。
このフィルターが目詰まりしてしまうと、家の換気がうまくできず、最悪は健康被害が出る可能性があります。
なので、全館空調を採用する場合、まず室内機のフィルター掃除は必須で、全熱交換型システムを採用している場合にはそのフィルターも掃除しなければなりません。
『熱交換器フィルター』
全館空調のデメリットその11
『空気清浄は嘘』
数ある全館空調の機械の中には、「空気清浄機能もありますよ」と宣伝しているものもあります。
これは半分正しくて半分間違っています。
というのも、エアコン業界によくある闇なのですが、ルームエアコンでもナノイーとかプラズマクラスターとかストリーマとか、よく訳のわからない横文字を耳にしたことはありませんか?
あれって、本当に意味がなくて、実験室で一定の効果が認められたから、それでお部屋の空気が綺麗になりますよとか言ってるだけで、実際はお部屋の空気は綺麗になってません。
だって、お部屋の空気が綺麗になっていくのであれば、室内機も汚れていかないし、カビも生えないじゃないですか。
でも、実際は室内機も汚れるしカビも生えます。だから、あれは実験室での話で、実際の家庭での運用とは全く別の話です。
では仮にですよ、空気清浄の効果が100歩譲って効果が本当にあるとして、先ほどダクトの汚れについて解説しましたが、いくら空気清浄してもあの汚いダクトを通ってきたら一緒じゃね?と僕は思うんですよね。
室内機で空気を綺麗にして清浄されていたとしても、ダクトが埃とカビまみれなんだから、そこを通ってきた空気はもはや清浄されてないも同じことだろと。
だから空気清浄なんてなんの意味もないですからやめた方がいいです。というか、全館空調自体をやめた方がいいです。
まとめと最適な空調システムの紹介
最後にとんでもない事実をお伝えしますけど、工務店だって全館空調がそう長く使えないこともわかってるんですよ。
確信犯です。
例えば、新築してその家に50年住むとしますよね。
機械が10年で壊れるとして、4回機械を入れ替える必要があるんですけど、プロから言わせれば、50年後はもうダクトも使えないし、冷媒配管もドレン配管も使えないです。冷媒配管でせいぜい持って30年なので、2回更新したらもうそこで終わりですね。3回目の更新は冷媒配管のことを考えたら無理です。
で、僕みたいなただのエアコン職人でもそんなことわかるのに、機械作ってるメーカーとか工務店の人たちがそこに気がつかない訳ないじゃないですか。
その証拠に、全館空調の家でもエアコン専用回路ってあるんですよ。
つまり、全館空調をやめたくなったらいつでもルームエアコンが取付できるように、ちゃんとルームエアコン用のコンセントを設置してるんです。
それって工務店側が「全館空調は30年で使えなくなる」ってわかってるからやってることなんですよね。
だって、50年使えるシステムで何も問題なく稼働できてそんなにおすすめするんだったらわざわざルームエアコン用のコンセントなんて作るわけがないじゃないですか。
だから確信犯なんですよ。
工務店側は全館空調を採用してもらえると120万円儲かりますから、それでおすすめしているだけだって、50年は使えないし、普通にルームエアコンを採用した方がトータルバランスがいいということもわかってます。
これ、誰も言わないけど真実だと思います。
そして、これが真実かどうかは全館空調を採用して50年経ってみないとわからないので、50年後にこの記事を読んでいただければ納得してもらえるんですけど、そういうわけにもいかないので、現在のところはいろんな情報に触れてみて多角的、総合的、長期的に判断していただくしかないのかなと思ってます。断言しますけど、絶対に後悔しますからね。
全館空調とか太陽光発電はいいところもあるんですけど、それも最初の10年だけで、10年以降からどんどん後悔が大きくなっていきます。採用期間が長くなればなるほどトータルのマイナスも大きくなっていきます。
よく、全館空調を採用した人のブログとかあるんですけど、それって現在のことしか書いてないと思います。
誰も将来的なデメリットに言及していないし、せいぜい数年の経過観察しかしていないですよね。でも、数年ではそんなに後悔はないんですよ。本当の後悔は30年後にやってくるんですから。
工務店とかメーカーは自分たちにとって都合にいことしか言いませんので、僕みたいな人間が一番その人にとっての正解をお伝えできるんじゃないかと思います。
で、個人的には全館空調はおすすめできないとお伝えさせもらったんですけど、僕ならもっと別の全館空調を採用すると思います。
僕ももうすぐ家を建てようと思っているのですが、その家は全館空調にしようと思ってます。笑
どういうシステムかというと、ハウジングマルチというシステムで、リビングとか大きい部屋には天井カセット型エアコンというのを付けます。6畳の部屋とか各部屋にはハウジングエアコンというエアコンを付け、トイレとか脱衣所とか玄関にも冷気がいくようにダクトを分岐します。
なので、イメージ的には全館空調のイメージなのですが、全ての部屋から個別運転もできるし、リビングの集中制御リモコンで、リビングからでも全てのエアコンを操作できるようにします。
これなら今、巷で流行っている全館空調のデメリットを全てなくすことができ、さらにルームエアコンのメリットも合わせて最強の全館空調システムができます。
50年後も使えるように、更新のことも考えて天井裏を広く設計し、30年後に一度、冷媒配管もドレン配管も電源も全て新設できるように設計します。
さらに、太陽光発電システムも設置し、エアコンの電気代くらいは発電できるようにしますので、電気代はいくら使ってもタダになるようにします。
パワコンが壊れたら自分で修理もできるし、パネルが発電しなくなれば安く交換もできます。
全てのシステムを導入すると最初の設置代金は高くつくかもしれませんが、それでも空調屋の自宅だから空調にはこだわりたいと思ってますし、自分で工事するので、普通の全館空調導入費が200万円だとしたら、ほぼそれと同じくらいでできると思います。
1部屋に1台付ける、将来のことも考える、これが正解です。
でも、普通の人ではお金がかかりすぎて無理だと思います。(初期費用600万くらい?)
自分で工事できるからこそのシステムですね、お金持ちでこのシステムを真似したい方はご相談ください。
最強の空調システムだと思います。最後までお読みいただいてありがとうございました。
Aircon Mediaでは「Air-concierge」(エアコンシェルジュ)をコンセプトに、『10年間の快適な空間』をお約束しています。高品質な工事はもちろん、10年間の製品保証ときめ細やかなアフターサービスを心がけてますので、エアコン工事で失敗したくない方はぜひ、Aircon Mediaにお任せください。
コメント
床下エアコンについってご見解をお願いします
今週中にも工事をしようと思ってます
床下どまの上に50ミリの断熱材をひき、外周基礎は裏表断熱します
床板は28ミリ合板とフローリングです
基礎は外周以外すべて独立基礎です 気流方向の調節用に仕切版を付けます
吹き出しはスリットで各室にするか迷っています
また 熱交換を併用するか迷っています
どうぞ宜しくお願い致します。
コメントありがとうございます。
プロの施工職人の床下エアコンについての見解としましては、
床下エアコンはお勧めしていません。
もう既に着工する段階でこんなことを申し上げるのもどうかと思いますが、
床下エアコンの役割とは、冬季の「床暖房」という意味合いが強く、
その床下エアコンで行う床暖房も電気代の高騰などでメリットがかなり薄くなっています。
それなら都市ガスのTESで行う温水床暖房システムか、
もしくはダイキンのエコキュート床暖房システムなどの方が全体コストとして優れていると思います。
わざわざ基礎断熱にお金をかけて床下エアコン式床暖房にするメリットはないと思います。
さらには床下エアコンは冷房には向きませんので、
居住地によっては冷房用に壁掛けエアコンなど必要でしょうから、
それなら尚更、温水床暖房と冷房用の壁掛けエアコンでいいと思います。
ご存知でしょうから詳しくは説明しませんが、
冷気は下に溜まるので、床下エアコンの冷房は足の裏から冷たくなってきます。
人の冷気体感は人体の太い血管部分にどれだけ触れているか?ですので、
足の裏が冷たくても人は涼しくは感じません。
首筋とか脇の下とか足の付け根とか、
そういう部分が冷やされてようやく冷気というのは体感できるんです。
もし、お子さんが生まれたとします。
そうすると赤ちゃんや小さいお子さんは冷たくなってしまいます。
大人は暑いです。こういうことが起こります。
だから床下エアコンは冷房には向きませんし、
さらにはカビ問題も必ず起こります。
壁掛けエアコンは上から冷気が降りてくるので、
冷気の方向が逆になります。
下から溜まってきて冷気に触れるのと、
上から降りてきた冷気に触れるのとでは、
冷気の濃度が全く違いますから、ここが大きな違いです。
床下エアコンは冷房には向きません。
ですので、
地域によっては将来的に冷房用の壁掛けエアコンを設置することがあります。
次にスリットの話ですが、
吹き出しスリットはゴミが落ちるし、
逆にゴミが出てくるのでお勧めできません。
床下は想像以上に埃っぽいですし砂っぽいです。
基礎断熱を入念に行なっていれば、
砂っぽさはある程度解消されているかもしれませんが、
とにかく床下のそれらが吹き出し口から吹き出してきて、
スリット周りはいつも砂っぽいというか、埃っぽくなります。
吹き出し口に光を照らしてみるとわかりますが、
部屋の空気中にかなり床下からの埃が舞っているのが見えます。
ですので、スリットにする場合は特に、床下の定期的な清掃は必須になります。
そういう意味でも、
温水床暖房の方がいいと思います。
全熱交換機も機械の導入代とメンテナンスコスト、
それから10年後の更新コストを計算してみてください。
これは床下エアコンの使用頻度によって損益分岐点が変わってきますから、
熱交換機を使用しなかった場合の暖房運転コストと、
熱交換機を使用した場合の暖房運転コストの差が、
熱交換機導入コストより大きいのか小さいのかで判断します。
そして、このブログの結論ですが、
太陽光パネルと蓄電池を設置し、
エアコンはハウジングマルチの集中制御システムで、
暖房は温水式床暖房との併用が最適解と結論づけています。
導入コスト、ランニングコスト、更新コスト、
メンテナンス性、利便性、熱効率、
あらゆる観点から総合的に判断してこの結論に至っています。
しかし、もう既に床下エアコンを採用することが決まっているのであれば、
それこそ野暮な話という訳で、大事なのはいかにご自身の選択を有意義なものにできるか?ということだと思います。
何事も実体験に勝るものはありませんから、
迷った時には全て採用してみたらいいと思います。
もちろん、予算の都合もあるでしょうし、
それを言い始めたらキリがないのが家づくりです。
ですが、悔いのないようにスリットも全熱交換機も採用してみたらいいと思います。
それで、もし、後悔したとしても、
その選択をした過去の自分を褒めてあげたらいいのではないでしょうか。
「また一つ、実体験が増えた」と思えば、
それは貴重な経験として、人生に深みと奥行きをもたらしてくれるかもしれません。
普通は誰しも後悔したくありませんし、失敗したくないと思います。
一生に一度のマイホームであれば尚更かと思います。
お気持ちはわかります。
しかし、やらない後悔よりやる後悔じゃないでしょうか?
各室スリットに熱交換機でお願いします。