どうもこんにちは。
エアコン職人さかなです。
今日はエアコンの『専用回路増設工事』について、料金とその内容を解説していきますが、まず最初に注意点としてお伝えしておきたいのが、これからお伝えすることは、あくまで一般的な業界標準の話であり、その基準として、大手家電量販店の金額を参考にしているという点です。
なので、当然、依頼する工事屋さんによって、多少、内容や金額が変わることがあると思います。
こちらの記事でお伝えしていることが、実際には「必ずしもそうとは限らない」ということをご了承くださいませ。
よろしくお願いします。
エアコン専用回路とは?
現在、ルームエアコンの電源には、エアコン専用回路を使用することが推奨されています。
専用回路とは、エアコン1台に対して、コンセントがひとつ、ブレーカーも一つと言うように、エアコンにしか使用しないと言う意味で、「エアコン専用の回路を一つ作りなさいよ」と言うことです。
お宅の分電盤を見てもらえればわかると思いますが、大きいメインブレーカーと小さいブレーカーが並んでいると思います。この小さいブレーカーは電灯回路やコンセント回路など、家中の電源をいくつかの回路に分けるのに使用します。
普通の足下のコンセントであれば、例えば、部屋に2つコンセントがあるとすると、多くの場合はその2つのコンセントからのびる電線は壁の中で繋がってやがて一本の電線になって小ブレーカーにつながります。
なので、例えば、一個の小ブレーカーを落とすと、一部屋全体の電源が落ち、コンセントも何個か使えなくなるはずです。
しかし、エアコン専用回路であれば、特定のエアコンコンセントが単独で入り切りできますから、エアコン専用回路の小ブレーカーを落とすと、そのエアコンコンセントだけが使えなくなります。
1つの小ブレーカーに対してコンセントが一つだけ、そのコンセントに挿すことができるのはエアコンだけ。
このような電気回路のことをエアコン専用回路と言います。
専用回路は法律で決まっているわけではない
今は、エアコン業界全体で、「エアコン専用回路必須」みたいな風潮があります。
全てのメーカーが、「エアコンの設置には専用回路を使用してください」と言っていますし、それに準じて、大手家電量販店も専用回路のないエアコン工事は禁止となっています。
ではなぜ、メーカーや大手量販店は専用回路必須だと言うのか?
それは、エアコンが比較的、運転電流値の高い家電だからです。つまり、電気をたくさん使うので、エアコンを蛸足配線みたいな感じで使用することにより、壁の中で電線が熱を持ち、発火したり、コンセントが焼けたりするからです。
電線が発火したりコンセントが焼けることが原因で、実際に火事が起きた事例もたくさんあります。
なので、火事が起こらないように、安全のためにエアコンのような運転電流値の高い家電には、専用回路を設けましょうね。っていう理屈があるんですね。
よく、マルチタップコンセントなどで蛸足配線をすると、マルチタップの根元がすごく熱くなっている事ってありますよね?あれと同じことがエアコンでも起こります。
実は、電気工事のルールとして、「内線規定」と言うものがあり、そこには電線の許容電流値というものが記されています。
法律ではないけれども、電気工事のルールとして、「これ以上の電流値は火災の危険があるからダメだよ」っていう電流値のルールがあり、僕ら電気工事士はキチンとそのルールを守る必要があります。
だって万が一、自分がエアコン工事して、それが原因で火事になったら大変じゃないですか。
それで「お年寄りが逃げ遅れて亡くなりました」なんて悔やんでも悔やみきれませんよね。電気工事というのは命の危険を伴います。
尊い命を守るためにも、法律で決まっているわけではありませんが、安全性を考えた時、エアコン専用回路が大切だということを、お客さんにはご理解いただければと思います。
弊社でも、お客さんになんと言われようが「専用回路のないエアコン工事」はお断りしています。
エアコン専用回路がないエアコン工事は一切行っておりませんので、専用回路工事をしてからエアコン工事をさせてもらっています。
専用回路増設工事の注意点
エアコン専用回路というのは理屈は単純です。
家の分電盤からエアコンを設置する部屋まで、一本の電線を引っ張って終わりです。しかし、理屈は簡単なのですが工事は大変です。
まず最初に考えなければならないことは、エアコンが一台増えることにより、家のメインブレーカーの許容電流値を超えないかどうか?ということです。
エアコンというのは運転電流値が高い家電ですから、最大運転電流で14アンペアくらいになるものもあるんですね。
なので、例えば、家のメインブレーカーが30アンペア契約だとすると、残りはあと16アンペアしか使えなくなります。
厳密には、メインブレーカーには黒白赤の電線がきていて、黒で30アンペア、赤で30アンペアまで耐えれるので、バランスよく使えば最大で59アンペアまで使用可能なのですが、例えば、黒線で14アンペアのエアコンを一台使っていて、もう一台、14アンペアのエアコンを黒線に追加すると、もうそれだけで28アンペアなのでギリギリになります。
ドライヤーとか炊飯器とか、電子レンジとか、あと何かちょっとでも使用すればすぐ落ちます。
で、これって本当によくある話で、エアコンを1台追加することによって、家のメインブレーカーが落ちやすくなるのは事実です。
僕らは「許容電流を圧迫する」とかいいますが、まずはメインブレーカーの契約電流値のチェックと、もう1台エアコンを追加しても問題がないかどうか?許容電流値に余裕があるかどうか?これらのことを第一に考えなければなりません。
エアコンを1台追加することにより、メインブレーカーが頻繁に落ちていたら、かなり生活に支障が出てきますし、じゃあ契約容量をあげればいいじゃないかという意見もありますが、契約容量をあげると基本料金が上がったりしますし、単純に契約容量があげられればいいですが、電柱からの電線の太さとか、電気メーターからの電線の太さとか、そういうところも全部張り替える必要が出てくる場合もあります。
そういう工事を幹線張り替えといいますが、幹線を張り替える工事ともなると、まず10万円くらいは最低でも覚悟しなければならないので、簡単に「容量変更すればいいじゃん」といいますが、そう簡単にできない場合もあるということです。
これがまず最初にお伝えしておきたい注意点です。
工事屋さんの中にはそんなこと一切気にせずに、言われた通りに専用回路を増やしてしまう人がいます。
でも、僕らはプロですからちゃんと後のことまで考えて、専用回路を増設することによるリスクの説明までしないといけないんですね。
場合によっては電気使用のバランスを考えて使ってくださいとか、エアコンと電子レンジとIHクッキングヒーターは同時に使わないでくださいとか、そのような形で、使い方のバランスに気をつけてもらうこともあります。
お客さんは電気のことに関しては素人ですから、工事屋さんはそれらのことを事前にお伝えして、お客さんにはそのリスクをちゃんと理解してもらって、それで初めてエアコンを1台追加する段取りをするべきなんです。
これがまず一番の注意点です。
専用回路増設の工事内容
まず、分電盤の空き状況にもよりますが、分電盤に追加の小ブレーカーが入る予備がない時があります。
「もう一杯ですよ」と。
そういう時には、分電盤を丸ごと交換するか、(50000円〜)分電盤の外に小ブレーカーを設置するしかないので、ブレーカーボックスみたいなものを設置する場合があります。(ブレーカーボックス7700円〜)分電盤が2個並ぶような形ですね。
まず、分電盤の空きがあるかどうか?これが一つ目のポイントになります。
次に、エアコンの部屋までの距離が問題です。
例えば、キッチンに分電盤があって、その分電盤の隣にエアコンを設置するとか、そういう距離が1mとか2mの短い場合もありますし、例えば、1階のキッチンに分電盤があり、2階の一番遠い部屋にエアコンを設置したいとか、直線距離でも15mとかそういう場合もあります。
距離が長ければ長いほど工事も大変ですし、追加料金も高くなっていきます。
そして、3つ目のポイントは「見栄え」です。
理屈的には単純で、ただ一本の電線を引っ張るだけなのですが、見栄えを気にし始めるととても大変です。
その方法には3つあって、
- 屋内露出配線
- 屋外露出配線
- 隠蔽配線
この3つです。
上から順番に安い順になっていて、同時に見栄えが悪い順になっています。
屋内露出配線が一番安いのですが、室内の天井付近をグレーの電線で固定していきます。
『屋内露出配線』
あまり屋内に電線が露出することを気にしないという方であれば、これが一番安くて早いのでいいかもしれません。
屋内配線でいいんだけど、もうちょっと綺麗にならないかな?というお客さんの為に、「モール」という配線カバーみたいなものがあります。
『配線モール1100円(1m)』
これを使うと多少は見栄えが良くなりますので、白いクロスの屋内なんかでは良いかもしれません。
『屋外露出配線』
次に、屋外露出配線という方法ですが、これは分電盤の背面とかに外壁に穴を開け、外をぐるっと回して配線する方法です。
屋内を選択するか、屋外を選択するか、ということになるのですが、個人的には屋内よりも屋外の方が見栄えはいいのかなと思いますし、距離が長ければ長いほど、屋外の方が直線的に配線できるのでいいと思います。
しかし、屋外の場合は、電線を裸で配線することができないので、「屋外保護配管」というものを使い、紫外線や雨から電線を保護する必要があります。
『屋外保護配管(PF,VE管)』
こちらの部材は大手量販店だと1mで1100円、20m使用したら22000円になります。
さらに、屋外から屋内に電線を引き込む時に、穴を開けてそのまま電線を引き込むと穴から雨が入ってくるので、雨とか虫の侵入防止用に、電線引込みカバーをつけます。
『電線引き込みカバー』
これが1個1100円くらいで、分電盤付近の外壁に1箇所、エアコン付近の外壁に1箇所、合計で2箇所必要になります。
屋内配線よりも部材を余分に使う分、屋外配線の方が金額は高くなります。
隠蔽配線
そして最後に隠蔽配線ですが、これが一番難しくて時間がかかる方法ですが、壁や天井の中に配線しますので、見た目は今と変わりません。一番綺麗な配線方法です。
しかし、本来であれば、電気配線というのは建築時に壁を貼る前にやっておくことなので、壁が貼られてしまったあとにやろうと思ってもできないんです。
なので、この隠蔽配線というのはできる家とできない家がありますし、分電盤とエアコン部屋までの位置関係や距離によってもできないことがあります。
場合によっては一部分だけ隠蔽配線したりとか、一部分だけ露出してしまうこともあります。
それでもいいから隠蔽で綺麗にやって欲しいというお客さんもいますから、そういう時はベストをつくさせていただきます。
ベストを尽くしてもダメなものはダメなので、そこは諦めていただくしかないのですが、とにかくベストを尽くします。
この隠蔽配線の方が綺麗だし、時間も手間もかかるので金額は一番高いです。天井裏に登ったり、床下に潜ったり、いろんな道具を駆使してなんとか壁の中を配線したりします。
金額は現場によって難易度が全然違いますので、ハッキリと決まっていません。
なので、『要見積もり』ということになりますが、大体、1時間あたり1万円くらいです。(技術料ということです)
エアコン専用回路の金額
大手家電量販店では、
『分電盤とエアコン部屋が同じ階である場合』
・同階専用回路工事14000円(電線10mまで)
『分電盤とエアコン部屋が異階である場合』
・異階専用回路工事25000円(電線20mまで)
『その他の付随料金』
- 屋外保護配管1100円(1m)
- 電線引込みカバー1100円(1箇所)
- 室内用配線モール1100円(1m)
- 電線追加延長1100円(1m)
- 隠蔽配線工事11000円(1H)(要見積もり)
ということで、エアコンの専用回路工事にはかなりのお金がかかります。
大手量販店でも、最低で14000円〜、異階工事で屋外配線だと50000円超えちゃうこともよくありますし、それくらい大掛かりで大変な電気工事だと思っていただければと思います。
最近の家には各部屋にエアコン専用回路がついてますけど、古い家にはエアコン専用回路がついていないことも多いので、こういう工事がどうしても発生してしまいます。
つくづく思いますけど、壁が張られてしまった後からの電気工事って、本当に大変なんですよね。
エアコン専用回路がない方は、ぜひこの知識を持って工事屋さんに相談してみてください。
では以上です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
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