どうもこんにちは。
エアコン職人さかなです。
マルチエアコンというものがあります。
室外機が1台に対して、室内機が2台とか3台とかそういうエアコンのことをマルチエアコンと言います。
今、この記事を読んでいる方はおそらく、現在、マルチエアコンが家に設置されていて、次の更新をどうしようかと悩んでいる方かと思います。
なぜなら、マルチエアコンというのは今現在、そんなに多く普及していないため、現在では本当に特殊な状況でのみ施工することが大半だからです。
15年前や20年前は一般家庭でもマルチエアコンを取り付ける工務店はありましたが、今現在はマルチエアコンよりも「全館空調」というシステムに移行しつつありますので、次回の更新をどうしようかと悩んでいる方のためにこの記事を書くことにします。
そして、この記事にたどり着いた方が何に一番悩んでいるかといえば、ズバリ、「次回はマルチエアコンをやめて普通のルームエアコンに変更した時のメリットデメリット、工事内容とその料金」ではないでしょうか?
その解説を今から現役の職人が全力で解説していきますので、ぜひ頑張って理解してください。
よろしくお願いします。
マルチエアコンからルームエアコンへの変更はオススメしない3つの理由
まず、ハッキリ申し上げます。
『現在、マルチエアコンがついているのであれば、次もマルチエアコンを設置されることをお勧めします』
もうすでに、量販店やその他、エアコン工事店に見積もりを出された方もいるかもしれません、どこかの誰かに相談されたかもしれません。
その店員さんやどこかの誰かがなんと言ったか僕にはわかりませんが、今現在、マルチエアコンがついているのであれば、次もマルチエアコンをつけるべきだと僕は思います。
なぜなら、あなたの家自体がもうそのように設計されて作られているからです。
あなたの家に現在、マルチエアコンがついているのであれば、次もマルチエアコンを選択するしかない設計になっているんです。
では、その根拠を順番に解説していきます。
まず、マルチエアコンの室内機が2台か3台かわかりませんが、仮に3台だとしましょう。
この、3部屋3台のマルチエアコンをルームエアコンに変更する場合、どのような工事が必要になってくるのか?考えてみます。
まず当然ですが、「専用回路」が必要になってきます。
マルチエアコンからルームエアコンへの変更はオススメしない理由その1:専用回路の工事が必要になる
専用回路というのはエアコン専用コンセントのことで、現在販売されているエアコンにはエアコン専用コンセントがないと設置ができません。
しかし、「専用回路」は現在のマルチエアコンの室外機のところに電源が1本だけ来ているはずですので、1台分はその電源を使用して専用回路を取ることができます。
室内機が3台のマルチエアコンの場合は残り2台分の専用回路が必要で、2台のマルチエアコンの場合は残り1台分の専用回路が必要となります。
ちょっと難しい話になりますが、現在のマルチエアコン室外機のところに来ている外部電源と室内機の連絡線を無理やり接続し、その連絡線を専用回路として電源を取るということです。
つまり、今までは室外機に電源が来ていて、室外機からそれぞれの室内機に電気を送っていたのですが、ルームエアコンの場合は室内機電源になりますので、室外機のところに来ている電源を、部屋内まで伸びている電線に接続し、その電線の先にコンセントを設置すれば1台分だけは専用回路を作ることができるということです。
こうすることで、1台分の専用回路は確保することができます。
そして、これは分電盤から最も遠い位置にある部屋の室内機に設置することをお勧めします。
なぜなら、専用回路増設工事というのは分電盤から遠ければ遠いほど電気工事代金が高くなるからです。
そして2台目以降の室内電源ですが、こちらはまず専用回路がないので、分電盤から新たに電線を引っ張ってくる必要があります。
分電盤が1階で、エアコンを取付けるお部屋も1階なのであれば近くていいですが、分電盤が1階で室内機が2階の場合は、その距離をずーーーと電気配線しなければなりません。
しかも、普通は電線というのは建築中に壁が貼られる前に配線しておくので壁の中に隠れているようになっていますが、壁が貼られてしまった後では基本的に壁の中を通すことができません。
つまり、「露出配線」ということになるのですが、基本的には家の中の天井隅をホッチキスの大きいやつみたいものをハンマーで叩いて電線を固定していきます。
基本的に電線の色はグレーなので、これは本当に見栄えが悪いです。
一応、「モール」という配線カバーみたいなものもあるのですが、それはそれで1mあたりの追加料金が発生しますので、2台分の2系統で仮に30mでも電線を引っ張ろうものならモールだけで3万円とかかかります。(一般的な料金です)
他には、一旦、家の外に電線を出し、外まわしで室内機のある部屋まで持っていく方法もありますが、この場合でも電線を屋外で裸で配線するわけにはいかないので、VE管などの「屋外保護配管」というものの中に入れて電線を保護した上で配線します。
この「屋外保護配管」も一般的にはだいたい1mあたり1000円くらいかかりますので、30mも引っ張れば3万円ほどかかってしまいます。
しかもこの3万円というのはあくまで「モール」とか「屋外保護配管」だけの金額なので、それプラス「2階から1階までの専用回路増設工事」という電気工事の追加料金がかかります。
つまり、室内機が2階にあり、分電盤が1階にあるというだけで「専用回路増設工事」ということで普通に5万円とかかかります。
これが3台マルチをルームエアコンに変更しようと思ったら、室内機×2で電気工事だけで10万円です。
この2箇所に関しても、専用回路を引っ張ったとして、次に配管穴を開けて、マルチエアコンがついていた場所の補修をして・・・ということになるのでとてもとても大変な工事になります。
なので、お店の店員さんがなんと言ったかは知りませんし、どこかの誰かがなんと言ったのかは知りませんが、僕は個人的にマルチが付いているのであれば、もうそういう設計なんだから、諦めて次もマルチエアコンを付ける以外に選択肢はないと思います。
しかし、この方法で専用回路を確保したとしても、室内機と室外機をつなぐ配管用の配管穴は開けないといけませんので、外壁に面した壁に1台につき1箇所、配管穴を開ける必要があります。
マルチエアコンからルームエアコンへの変更はオススメしない理由その2:外壁に配管穴を開ける必要がある
配管穴というのは、エアコンの室内機と室外機を繋ぐ管が通る外壁穴のことで、マルチエアコンですとおそらく、配管が壁の中を通っているかと思いますが、それは建築中に仕込んだ配管であり、「隠蔽配管」などと言ったりします。
しかし、建築後にエアコンを付けようと思ったら穴を開けるしか方法がありませんので注意が必要です。
今現在、マルチエアコンの室内機が外壁面に設置されているのであれば、そのまま今ついているエアコンを取り外して、その背面に穴を開けて、次も同じ場所に室内機を設置することができるかもしれません。
そうすれば、既設の配管穴自体は、新しく付けた室内機で隠れるので、中からの見た目はこれまでと同じになります。
しかし、今現在、マルチエアコンの室内機が設置されているのが部屋の真ん中とか、外壁に面していない面に設置されているとしたら、そこに次のルームエアコンを設置することはできません。
部屋の真ん中では室内機と室外機をつなぐことができないからです。
さらに、先ほど外壁に面していれば同じ場所に取り付け可能と言いましたが、外壁に面していても、その真後ろに室外機がすぐに置ける状況でなければなりません。
例えば、1階ならすぐ後ろは地面だとか、2階ならベランダであるとか、室外機がすぐにおける状態であればいいのですが、例えば2階のベランダがない場所とかになると、室内機は2階で室外機が1階ということになり、かなり割高な工事になってしまう場合もあります。
それでも取り付けられるだけまだマシな方で、部屋の真ん中にあるとか、背面に穴を開けられないとか、僕の経験上、いろんな問題が発生して普通に同じ場所に室内機を取り付けられないことも多いです。
それでも、仮に部屋の真ん中に室内機があったとしても、外壁に面した違う場所に取り付けることは可能ですが、既設の室内機を取外すと思いますので、今度はその取り外した跡をどうするのか?という問題も出てきます。
マルチエアコンからルームエアコンへの変更はオススメしない理由その3:室内機位置変更による内装工事が必要になる
マルチエアコンの室内機を取り外すと、そこには直径7センチほどの大きな穴が空いていて、そこから配管とドレンと電線が出てきています。
エアコンを壁に固定していたビス跡やボードアンカーの穴も大きく残ることでしょうし、クロスの色違いもありますし、それを全部補修するとなると、その内装工事費だけでも結構な金額になると思います。
それがまず、1箇所目の話です。
分電盤から一番遠い部屋に外部電源から取った専用回路を流用し、コンセントを設置し、外壁に穴をあけ、新しいルームエアコンの室内機を設置した時の1台目の話です。
既設のマルチエアコン室内機が運よく外壁面に設置されていて、そのまま背面に穴を開けることができればラッキーですが、そうでない場合はマルチエアコンの室内機が付いていた場所のボード穴の補修、クロスの補修などが発生します。
もちろん、それがそのままでよければそれでいいのですが、やはり大きな穴が開いているので普通の人なら気になると思います。
さらに、室外機もすぐ近くにおける保証はないので、室外機の場所によっては追加料金が発生します。
これが1箇所目、1台目の話です。もうすでに大変ですよね?笑
仮に3台マルチで3台とも室内機を同じ場所に設置できないとしたら、3台分のクロスの補修工事などが必要になりますし、僕らはエアコン屋なので、クロス補修に関してはお客さんの方で専門業者さんを手配してもらって補修工事してもらうことになります。
そのような業者の手配や見積もりの立ち合いなどなど、エアコン工事が終わってからもやらなければならないことに追われますので、その消費エネルギーのことも視野に入れておいてください。
マルチエアコンからルームエアコンに変更した場合の料金
ということで、ここで参考までに、僕がこれまでにやってきた工事の金額を公開しておこうと思います。
マルチエアコンからルームエアコンに変更した場合の項目とその金額になりますので参考にしてみてください。
- マルチエアコン取外し工事10000円
- マルチエアコンリサイクル収集運搬費1900円
- 外部電源圧着、1台目コンセント設置工事5000円
- 外部電源屋外保護配管処理、ジョイントボックス設置5000円
- 屋外電源電圧切り替え工事200v→100v 2000円
- 1台目ルームエアコン取付工事15000円
- 2台目専用回路増設工事2階1階25000円
- 2台目専用回路屋外保護配管20m20000円
- 2台目ルームエアコン取付工事15000円
- 2台目専用回路ケーブル延長工事10m10000円
- 3台目専用回路増設工事同階工事15000円
- 3台目専用回路モール配線工事10m10000円
- 3台目ルームエアコン取付工事15000円
合計148900円で税込163790円です。
それでは、こちらに対してマルチエアコン→マルチエアコン更新工事がいくらになるのかというと、
- マルチエアコン取外し工事10000円
- マルチエアコンリサイクル収集運搬費1900円
- マルチエアコン取付工事(3台分)30000円
- 1台目室内機隠蔽配管作業8000円
- 2台目室内機隠蔽配管作業8000円
- 3台目室内機隠蔽配管作業8000円
- 合計65900円で税込72490円
たったこれだけです。
まず、工事代金だけでも2倍の違いが出てくることを理解しておいてください。
そして、専用回路を新たに引っ張る必要がありませんので、屋内配線だとか屋外配線だとか、そういう「配線」が不必要に出てきませんので、見栄えが悪くならないというメリットもありますし、室内機を取り外した後の壁の補修の必要もありませんし、外壁に穴を開けて家にダメージを与えることもありません。
これが僕がマルチエアコンが付いているお宅では次回もマルチエアコンを取り付けたほうがいいという理由です。
- 工事代金が全然違う
- 余計な配線が出てこない
- 外壁に穴を開けずに済む
- 壁の補修をやらなくて済む
- 室外機も1台でスッキリする
などなど、マルチはマルチで更新したほうがいい理由は山ほどあります。
じゃあ逆に、ルームエアコンにした時のメリットは何かと聞かれると、僕は個人的にルームエアコンを設置するメリットは無いような気がします。
プロの目線から見て、本当にルームエアコンに変更する意味がわかりません。
強いていうのであれば、マルチエアコンですと、万が一室外機が故障してしまった時に3台とも止まってしまうというデメリットはあると思います。
しかし、故障したら修理すればいいだけですし、そんな一時的な特殊パターンのためにわざわざルームエアコンを設置するほどでも無いと思います。
まず、万が一故障することなどほとんどないですから、起こりもしない可能性に怯えて現実を見失うことほど愚かなものはないと僕なら考えます。
しかし、おそらく、あなたがルームエアコンを検討しているのには全く別の理由があるかと思います。
言い当ててみましょう。
それは、あなたが相談した相手が「ルームエアコンの方がいい」と言ったからではないでしょうか?
その相談した相手は量販店の店員さんかもしれないし、どこかのエアコン屋さんかもしれませんが、その方々には悪いですが、その意見は間違っていると思います。
理由はもうこれまでに述べてきたことで十分伝わっているかと思いますが、最大の落とし穴はここにあるんです。
その相談した相手というのは、あなたの住宅事情のことなどまるで気にすることなく、ただ、「めんどくさい」という理由でルームエアコンを勧めているんです。
まずはそのことをよく理解してください。
- 今はルームエアコンが主流ですよ
- 隠蔽配管はもうやめた方がいいですよ
- マルチエアコンはもう数が少ないですよ
様々な「マルチエアコン否定意見」を耳にしたことでしょう。
しかし、そのどれもあなたのことを親身になって考えてくれた結果ではなく、あくまでその相談した人たちにとって都合のいい解釈だということをお伝えしておきます。
量販店の店員さんは基本的にマルチエアコンの取り扱いに慣れていませんので、
- 特殊な機械を発注するのが面倒
- どんな機種を注文したらいいのかわからないから間違えたら大変だ
- メーカーに問い合わせるのも面倒だ
というようなことを頭の中で考えているんです。
もちろん、そんな店員さんが全てではありませんが、ほぼ99%の店員さんはマルチエアコンの基礎知識など皆無だと思ってください。
続いて、エアコン屋さんがルームエアコンをお勧めしてきた場合を考えてみましょう。
その場合でも、あなたのことを親身になって考え抜いた結果、ルームエアコンをお勧めしているのではなく、単純に工事料金が高い方が儲かるからルームエアコンを勧めているか、もしくはマルチエアコンの工事ができないかのどちらかです。
マルチエアコンというのは基本的に隠蔽配管という施工方法になっていますので、腕の悪い職人はこの「隠蔽配管工事」ができないんですね。技術が無くてできないと。
しかし、ルームエアコンの外壁に穴を開ける方法であればできるので、自分都合でそちらを勧めてくるのはよくあることです。
個人的には隠蔽配管工事ができないという時点で職人としてはかなり腕が悪い方ですので、そんな人に外壁に穴を開けさせるのもかなりリスキーだとは思いますが…、それはまた別の話なので置いておくとして、つまりは店員さんもエアコン屋さんもルームエアコンを勧めてくるという時点で自分都合でしか物事を考えられない人たちなので、相手にしなくて結構ですということです。
確かに、現在、マルチエアコンは主流ではなく、生産数もかなり少なくなってきてはいますが、建築した時の工務店さんが説明してくれた通り、マルチエアコンにはたくさんのメリットが存在します。
そして、そのメリットは、ただ時代に選ばれなかったというだけで、僕は今の時代でもそのメリットを享受することは全然可能だと考えます。
マルチエアコンにはマルチエアコンを。
最初からそのように設計されているわけですから、その家にとってはマルチエアコンが最適なようになっているんです。
それをわざわざルームエアコンに変える必要はありません。
現在もダイキンさんがいい商品を作ってくれていますので、ぜひダイキンさんのマルチエアコンをつけてみてください。
もし、周りにマルチエアコンを取り付けることができる業者がいないのであれば、弊社にお任せください。
業者都合ではなく、お客さん都合で最適な提案をさせていただきます。それができてこそ本当の職人だと思っていますから。
心からあなたの快適な空調生活を願っています。
どうもありがとうございました。
Aircon Mediaでは「Air-concierge」(エアコンシェルジュ)をコンセプトに、『10年間の快適な空間』をお約束しています。高品質な工事はもちろん、10年間の製品保証ときめ細やかなアフターサービスを心がけてますので、エアコン工事で失敗したくない方はぜひ、Aircon Mediaにお任せください。