- エアコンサイズ選定の悩み
- とりあえず一回り大きいモデルでいいかな?
- 店員さんのオススメでいいのかな?
- せっかくの高気密高断熱住宅の性能を無駄にしていませんか?
Aircon Media技術担当の小林です。
このページを読んでくださっている皆さんは、おそらく家庭用エアコンのカタログを一度は目にしたことがあるでしょう。エアコン以外の家電製品、たとえば冷蔵庫は庫内容積・ℓで、洗濯機は洗濯容量・kgで「機械の大きさ」が分類されていますね。
ではエアコンは何を基準に分類されているかご存知でしょうか?
答えは「畳数」です。
では、業務用エアコンのカタログをご覧になったことはあるでしょうか。 きっとほとんどの方は読まれたことがないかと思います。
じつは業務用では「畳数」ではなく「馬力(HP)」で分類されています。
なぜ分類の基準が違うのでしょうか?
業務用は、その部屋の用途によって必要なエアコンの能力が変わってくるからです。
たとえば、同じ広さの事務所と焼肉屋に、同じエアコンをつけて冷房した場合、きっと事務所は冷えすぎてしまい、焼肉屋はそれでも冷えないかもしれません。 すなわち、単に「広さ」という「畳数」でエアコンを選ぶのは不適切で、熱のやりとりがどれほどあるかを計算することが必要なのです。
現在の家庭用エアコンの「畳数」は、1964年につくられた基準をもとにしています。
この当時の住宅は、気密性や断熱性などをほとんど考慮していませんでした。一方、現在の住宅事情はどうでしょうか。
高気密高断熱住宅はもとより、一般的な家であっても当時の気密性・断熱性を大きく上回る性能をもっています。
現代において、家庭用エアコンを「畳数」という基準だけで選ぶことは、業務用エアコンを同じく「畳数」で選んでいることと同じです。
しかしながら、鋭い方は「昔の基準すなわち畳数で選ぶと過大能力になってしまう可能性がある。 能力が足りなくなるわけではないのだから良いではないか」と思われるかもしれません。
じつは、そんなに単純な話ではないのです。
大きすぎる能力のエアコンをつけると、どうなる?
結論: 除湿ができなくなる。冷房していても、ずっとムシムシする。
パワーのあるエアコンをつけると、きっとたくさん除湿をしてくれそうです。この予想は誰もがするでしょう。
言っちゃいけないことを言うと、多くのエアコン職人や販売員も大体そう思っています。 ですからユーザーがそう予想することは、まったく無理あることではありません。
パワーのあるエアコンをつけると、すぐに冷えます。すぐに暖まります。 これは紛れもない事実です。
しかし、パワーのあるエアコンをつけるとすぐに湿度が下がるかといえば、それは間違いで、それどころか「真逆」です。
なぜでしょうか?
冷たいコップの外側には水滴がつきます。空気中の水分がコップの表面で冷やされて、液体になったからです。 すなわち空気中の湿度が下がります。エアコンの除湿も基本的には同じ原理です。
では、パワーのあるエアコンをつけて、すぐに部屋が冷えたとしましょう。 するとエアコンは運転をいったんやめて、待機状態に入ります。これを専門用語で「サーモオフ」の状態にあると言います。 このとき、室外機の圧縮機も停止しているので、熱交換器は冷えません。
お気づきですか?
「すぐに部屋が冷えると」「エアコンはいったん止まります」「熱交換器は冷えません」その結果、除湿もできません。
事実は除湿をするためには、ある程度の時間熱交換器が冷えていることが必要条件です。
部屋の熱負荷とエアコンの能力がつりあわないとすぐに設定温度に達してしまうので、除湿する時間を確保してくれないというわけです。 除湿するためには「のんびりゆったり冷房する時間」が必要なのです。
もしこのページをエアコン職人が読んでくださっているなら、家庭用マルチエアコンの能力電気特性を確認してみてください。 マルチエアコンは大きな室外機の能力を、運転中の室内機に余裕を持って充てることができるシステムであり、呼称能力2.2kWのエアコンでも、単独運転時は暖房能力3.2kWを出すことができます。 これは実に2〜3サイズ上の能力です。
一方、冷房能力は呼称通りの2.2kW。
そうです、冷房時も3.2kWもの能力を出してしまうと除湿ができず、快適性を損ねる可能性があるため、あえて能力を絞っているわけです。
表題の問いによくある答えとして「燃費(運転効率)が悪い」などがあります。 それも当然一理ありますが、もっともわかりやすく重要な側面は「除湿」と考えています。 運転効率は同じ環境にある別の個体がないと比較できないので、正直ユーザーは知る由がない話です。
よくネットの口コミに「**のエアコンは湿度が下がらなくて蒸し暑いので良くない」という書き込みをお見かけします。 メーカーの除湿制御の方法にもよるかもしれませんが、選んだエアコンの能力が大き過ぎたのではないでしょうか。
空調というのは、温度を操ることは比較的簡単なのです。難しいのは、湿度を思い通りに操ること。
除湿する時間が得られないほどの能力を選んでしまうというのは、反対に「冷えない」というのと同じくらい我々プロにおいては凡ミスであり、ご法度です。
(言ってはいけない補足)
これらの論理を大体わかっていても、いまだに、数ランク大きいエアコンをおすすめする職人や販売員が見受けられます。
その理由はパワフルなエアコンの方が高価なので、そちらを買っていただいたほうが売上が上がるためです。
職人としての格はエアコンのパワーと同じランクだけ下がるでしょうが、商売としてはこれも「正解」の一つなので、単純に「間違いかどうか」ではなく、その職人や販売員がどちらの目線に立っているかという目線的な話になります。
負荷計算するうえで結果を左右する大きな要素はなに?
結論: いちばんは「換気量」です。とくに冬場のレンジフードは要注意。
負荷計算するうえで「コレは計算結果にすごく影響を与えるな」という要素のことですが、ひと昔前までは「窓の数と大きさ」などと言われていました。
たしかに窓は通常の壁面と比べて内外の熱のやり取りが大きくなりやすい部分で、すなわち断熱性が悪い箇所です。 しかし、最近の窓はよくできていますので、二重サッシであったりすると計算に使用する「係数」が変わるので、窓はそれほど計算結果に影響を与えません。
一方、レンジフードは通常、420m^3/hほどの換気量があります。
一般に、おとなしくしている人間1人あたりの必要換気量を25m^3/hとするので、それの16.8人分にあたります。 さらにレンジフードは「熱交換器」などによって、熱を捨てないようにする努力を組み込むことができませんので、せっかく冷暖房した空気を大量に捨ててしまい、外気をそのまま同じだけ取り込むことになります。
夏場は屋内26℃、屋外33.4℃とすると、その温度差は7.4℃に収まりますが、冬場は屋内22℃、屋外0℃とすると、温度差は22℃。この暖房負荷が、計算結果を大きく左右してきます。
負荷計算をしようと思うが、どうしたらよい?
結論: プロに任せることが無難です。Aircon Mediaでは次に示すような負荷計算書をお作りします。
負荷計算には様々な方法があり、Aircon MediaではASHRAE(アシュレイ・米国暖房冷凍空調学会)のTAC温度法による設計外気条件を用いた一般的な負荷計算を行っています。
Aircon Media「冷房・暖房負荷計算書」の解説
Aircon Mediaでは、
- 場所はどちらですか?
- お部屋の温度・湿度はどの程度にしたいですか?
- 発熱器具を使用しますか?(=お部屋の用途はなんですか?)
- 通常在室する人数は何人ですか?
これらの項目をお聞きし、それ以外はご提供いただいた図面から読み取って負荷計算書を作成します。ご提出いただく図面は、次に示します。
FAQ
Q1. 負荷計算書の作成だけをお願いすることは可能ですか。
可能です。 計算だけでもお気軽にご相談ください。
Q2. 負荷計算書の計算結果をもとに、Aircon Mediaでエアコン工事をお願いしようと思っています。計算結果よりも大きめ(小さめ)のエアコンを購入することは可能ですか。
もちろん可能です。
Q3. ガレージにエアコンをつけたいのですが、このような特別な部屋も対応できますか。
可能です。まずはお気軽にご相談ください。