3階戸建て住宅 3階1階下ろしエアコン設置
神奈川県横浜市 2023年9月施工
こちらの案件は最近増加している狭小住宅での施工です。
敷地いっぱいに建物があり、家の周りの通路幅は広いところで40cm、狭いところでは30cmよりも狭く室外機をまともに置くスペースもないような状況です。
室外機設置スペースが少なく、作業もやりにくい環境での工事は、量販店などでは断られるケースもあります。今回はまさしく、家電量販店では施工をお断りされるような設置環境の工事で、3階へのエアコン設置をご依頼頂きました。
工事概要
- 新規 3階→1階下ろし 2.2kW(直下の地面に室外機設置場所あり・作業スペースややあり)
- 新規 3階→1階下ろし 2.2kW(直下の地面に室外機設置場所なし・作業スペースなし)
- 入替 2階→1階下ろし 4.0kW(直下の地面に室外機設置場所なし・作業スペースややあり)
- 新規 1階2.2kw標準工事(直下の地面に室外機設置場所あり・作業スペースあり)
現地作業期間 | 延べ2日間 |
参考工事総額 | 約45万円 |
今回の工事の特徴
クライアント様の要望
- カビの発生や虫の侵入を阻止したい
- 建物周辺を歩けるスペースを確保
- 寝室はベット直撃を避ける吹き出し方向を考慮
- 室外機は車庫内にまとめて設置して欲しい
エアコン工事は、室内機と室外機を配管と呼ばれる管で接続する必要があり、3階に室内機を取り付けるのであれば、外壁側も3階の高さまで作業員が登ってくる必要があります。しかし、基本的には「スライダー」と呼ばれるハシゴ使用して作業するのですが、そのスライダーが安全な角度で設置することができないとか、そもそも敷地面積が狭すぎてスライダーを設置することができないなど、室内機を3階に設置する場合には、実はさまざまな制約が発生します。
このような場合は通常、足場を設置してエアコン工事を行うことになりますので高額な工事になる傾向があります。(約10万円〜15万円ほど)高額と申しましても作業環境によっては必要なコストでもあります。
今回のお宅では地上のスライダー設置スペースは最大で60cm程しかなく、それ以外のエリアはどんどん狭くなっていました。 室外機の設置方法も冷暖房性能に大きな影響を及ぼします。物理スペース的に置けるからと言って、そのスペースに押し込めばよいというものではありません。
こういった狭小住宅では、与えられた条件の中でコストと空調能力のバランスを考慮して最善策を提案することが大切で、その結果がクライアント様のメリットにつながります。
当社提案
- 3階下ろしでスライダー作業が不可能な場所は次回から配管再利用で更新できるようにする
- 3階下ろしでスライダーアクセス可能位置は3階標準工法でコストセーブ
- LDK室外機設置場所はショートサーキットを考慮しブロック塀の上に設置
- 室外機風向ガイド追加(壁面のコケ発生対策)
- 3階の高低差と配管長を考慮した機種選択(チャージレス長を考慮)
- 無駄のない配管長を考慮した室外機設置場所選定
- 開孔部のウレタンフォーム充填
通常エアコンでは配管長がある一定以上の長さになると冷媒ガスを規定量追加する必要があります。 この作業は通常の工事料金には含まれていませんので追加料金が発生します。
カタログなどに「チャージレス長」などの表記で追加のガス追加充填を行わずに対応できる配管長が記載されています。
特に3階下ろしではこのチャージレス長を微妙に超える配管長が必要なケースが多々あり、追加充填のコストが発生する場合や業者によっては追加充填せず、後々、空調性能に影響するケースが見受けられます。 モデル選択の際高低差及びチャージレス長を考慮したモデル選択もトータルコストを検討する上で重要です。
施工状況
3階下ろし(書斎)
チャージレス長と高低差を考慮しダイキンのベーシックグレードであるEシリーズを選択いたしました。
室内機は既存の穴を利用し右直で取り付けです。
虫の侵入や断熱効果を向上するためにウレタンフォーム充填オプション施工をしております。
こちらは隣地よりスライダーによりアクセスできる環境にありますので通常のスライダー3階施工です。 (クライアント様によりあらかじめ隣地使用の許可をお願いしております。)
3階開孔部分から地上まで障害物も無くまっすぐに下ろしました。
このエリアは敷地内で一番幅のある部分でしたので室外機は標準地面置きとしました。
ただし正面に擁壁があり、将来擁壁を綺麗に塗装する可能性もあるとのことでしたので風向ガイドを追加しました。 環境によってですが室外機からの排気が直撃することによりコケが周囲より多く繁殖する場合があります。
風向ガイドにはショートサーキットによる能力喪失を防止する効果と排気が直撃することによる障害を予防する効果があります。
※ショートサーキットとは、室外機が排出した熱風が正面の塀に当たって跳ね返り、またその熱風を室外機が吸い込んでしまって、熱交換ができなくなるエラーです。エアコン本体が異常を検知して運転が停止してしまいます。
正面のブロック塀とは20cm程の隙間を確保しましたので、お掃除などで通る場合にも無理なく通り抜けすることができます。
3階下ろし(寝室)
こちらも同じくダイキンのEシリーズです。
既存の穴はありませんので、通常は配管が目立たないようにエアコンの直近右側で開孔して配管を屋外に出しますが、今回は敢えて開孔位置を下にずらして開孔し、室内配管カバーでわざと迂回するルートを取っています。
ここには大切な理由があります。
室内機の位置が決まり開孔されましたので屋外配管の施工準備です。
本日のメインイベント、『ロープワーク特別高所作業』の開始です。
4階(屋上)部分から屋根を経由して下降して、3階壁面の作業場所にアクセスします。
作業員の降下ラインはもとより、縄ばしごを固定するロープと非常用のロープなど複数のロープを準備します。
作業スペースを屋根から見下ろすとこのような状況です。
通常のスライダー作業ではとても対応できません。無理にスライダーで作業すれば良くて大怪我、下手をすれば自宅の敷地で人が死にます。 これが家電量販店等で工事を断られたり、足場が必要となり工事費が高額になる原因です。
建物にダメージを与えないよう養生します。
少し奥まった位置に開孔があるので、建物正面からスライダーで作業することは難しいですし、屋外配管カバーを綺麗に垂直に取り付けることもできません。
上部から順に下に向かって作業していきます。
このような作業はエアコン職人の中でも特別な訓練を受け、更に体力と気力のある者のみがなせる手法です。
垂直に下ろす部分はこのように綺麗に収まりました。
建物の形状に合わせて配管に負担を掛けないよう屋外配管カバーのルートを考えます。
特に横方向や建物の角に配策する場合は雨樋の排水管との取り合いで設置場所をよくよく検討する必要があります。 また「どのように美しく、スマートに施工するか」という点で職人のセンスが問われる作業でもあります。
壁面にある「屋外コンセントの抜き差しが容易にできること」もクライアント様から要望を頂いておりましたので、その部分を避けるように配策しました。
車庫の土間の排水勾配が逆勾配になっており、エアコンから排水された水が溜まってしまうような状態でしたので、きちんと下部ドレンも処理します。 冬季暖房使用時は1日に3~4リットルのドレン水が室外機から発生することもありますので、日の当たらない車庫や軒下、ベランダなどのドレン排水には注意が必要です。
ここまでご覧いただいてお気づきと思いますがこの様な大掛かりな作業を次のエアコン更新工事や修理の度に行うのはコスト的に負担が大きくなります。
そこで先程の工夫が生きてきます。
3階にある室内機はあえて配管の接続部分を屋内に収まるように考慮し、長さに余裕を持たせて設置することにより、次のエアコン交換時の余裕を確保し冷媒配管を再利用し次回からは屋外高所作業が不要となる条件をあらかじめ用意することにしました。
今回の工事費は高所作業とロープワーク料金となり決して安い工事費ではありませんでしたが、次回の工事は同一階同等の料金で済むことになり、長い目で見るとコストセーブのみならず、3階の特殊な高所作業が可能な業者や職人を探したり、見つからない場合の待ち時間、足場の設置を考慮する手間など、あらかじめ考えられるストレスをほぼ無くす事ができました。
こちらの寝室では別途に直接風が当たらないような向きで室外機を設置するため、また右側の壁面では窓との干渉でスペースがないこともあり最適な室外機の向きと最適な開孔位置で施工することができました。
2階LDK
こちらは2階ですので高所作業の問題はありません。
しかしながら室外機の設置場所の問題がありました。
この状態ですとショートサーキットにより、夏はエアコンが冷えない、冬は霜取り動作が頻繁に起動しなかなか温まらない事態になります。最悪の場合はエラー停止します。
LDKは4.0kWという容量のエアコンで、室外機は通常よりも大型タイプになり地面置きするスペースがありませんでした。
そこであえて通常の壁面に沿った設置方法ではなく、室外機の吸排気スペースの確保と、メンテナンスやお掃除で建物の周りを歩く際に邪魔にならないようブロック壁の上に載せ、配管は空中を渡す方法を提案させて頂きました。 ブロック壁部分はクライアント様の敷地内であったことが幸いです。
2階の配管穴から真下にそのまま室外機を設置すると、壁面との離隔が不足してしまいますので、スペースが十分な位置まで敷地奥方向まで配管を延長して室外機を設置しました。
アンカーボルトで固定したアングルに前脚を乗せ室外機を設置しました。
これにより狭い空間をかがむ状態にはなりますが歩行して通過することが可能になり、室外機を乗り越えて移動するような事態を回避できます。(一番奥に見える隙間は人が通れないほどの狭さです)
また外壁仕上げが「吹き付け壁面」の場合にエアコンの排気が直接当たると、コケが通常より多く発生して美観を損ねるケースが良くありますので風向ガイドを追加して対策しました。ブロック塀を見ていただければわかるかと思いますが、このような日陰になる場所で室外機の湿気を含んだ風が当たる部分は高確率でコケが発生します。
夏はもちろんですが特に暖房の立ち上がり性能が高く大変気持ちの良いモデルです。
いかがでしたでしょうか?
今回はお天気の都合もあり2日に分けての施工となりました。ロープワークの場合、安全の為に雨天や強風の日は作業を中止または中断しなければなりません。
足場設置を設置して行う場合に比較して工事費は節約できます。
沿岸地域などの塩害のあるエリアを除いて冷媒配管に損傷や劣化が無ければ30年以上は使用できますので次回のエアコン入れ替え時は再利用可能です。 場合によっては更にもう1回使用できるケースもあると思われます。
この様に特別高所作業が必要となるケースでは、通常の工事に比べて規模が大きくコストもかかります。しかし、弊社では10年間にわたって安心してエアコンをお使いいただけるように、万一それまでに不具合がある場合には効率的に対処でき、その先の将来にわたって極力、重複した経済的負担のかからない工夫とご提案をしております。
3階建て住宅用エアコンの新規取付または更新でお悩みの際は是非ともAircon Mediaに相談ください。